髪型で失敗しないために

お店においてある

「女の人生は髪できまる」の著者

佐藤友美さんがこんなことをいってらっしゃいました

ヘアライターの佐藤友美(さとゆみ)です。私はこれまで約20年にわたって、4万人の髪型を変える企画を担当してきました。現在は、10代から70代まで、数多くの女性の髪の悩みを聞き、直接、髪型や美容院選びのアドバイスをしています。

 12月は、1年でいちばんみんながヘアチェンジする時期。私のもとにも、いろんな髪の悩み相談が寄せられます。とくに多いのは、

「いつも気に入った髪型にならない」

「自分に似合う髪型がわからない」

というご相談。

 これは、あらゆる年代の女性から聞く悩みです。なかには「髪型、めちゃくちゃ失敗しました!」と泣きそうな顔で駆け込んでくる人もいます。

 でも! 実はそれ、カットやカラーを失敗したのではなくて、美容院でのオーダーを失敗しただけということがほとんどなのです。

 こういう女性たちに、「普段、どうやって美容院でオーダーしていますか?」と聞くと、大抵「似合うようにしてください」とか「おまかせで」と言っているという人がほとんどです。

 実は、これが、失敗のもとです。美容院で「おまかせで」と言ってはいけません。

似合うには「2つの種類」がある

 なぜ、美容院で「似合うようにしてください」とか、「おまかせで」と言ってはいけないのか。

 それは、「似合う」には2つの種類があるからです。

 「似合う髪型」というと、ほとんどの人は、顔や髪質に似合っていることを指すと考えます。この場合の顔は顔立ちや顔型を指します。

 けれども、これは「似合う」の半分でしかありません。それと同じか、それ以上に大事なのは、あなたの「心に似合うかどうか」です。心に似合うとは、今のあなたの気分や気持ちに合っているという意味です。

(A)顔・髪質に似合っている

(B)気分・気持ち(心)に似合っている

この両方がそろってはじめてピンとくるのです。

 どんなに顔や髪質に似合っていても(A)、その髪型が自分の気持ちとフィットしていなければ(B)、しっくりきません。

 例えば以前、私の友人が「髪型を大失敗した。どうにかしたい」と言ってきたことがありました。彼女は当時45歳だったのですが、吉川ひなのさんにそっくりの美女で、実年齢よりも10歳くらい若く見られる人でした。

 彼女に話を聞くと、美容院で「似合うようにしてくれたら、あとはおまかせで」と言ったそうです。すると、それこそ吉川ひなのさんのように、前髪をぱつんとカットされたかわいらしい髪型にされたのだとか。

 正直言って、誰が見てもその髪型は彼女にすごく似合っていました。けれども彼女は普段、上場企業の役員相手にコーチングをする仕事をしていて、少しでも威厳を出すために黒のパンツスーツを着て仕事をしているような人でした。「こんなに若く見えたら、仕事に差し障る」と言います。

 このような問題を、私は「似合えばいいってもんじゃない問題」と名付けています。髪型界隈ではつねにこの「似合えばいいってもんじゃない問題」が勃発しています。

 これは、「似合う服と好きな服は違う件」と似ています。いくら似合うと言われてもベージュは嫌いとか、ミニスカートは苦手とかってありますよね。

 彼女の場合、A「顔・髪質」には似合っていたけれど、B「気分・気持ち(心)」に似合っていなかったから「失敗した」と感じたわけです。

 この失敗は、美容院でのオーダーの方法を変えれば防ぐことができます。

美容院のカウンセリングは、病院の問診と同じ

 美容院で気に入る髪型になるためにいちばん大事なのは、「自己開示」です。

 病院で、ちゃんと自分の症状を伝えないと正しい処方箋をもらえないように、美容院でもどんな自分になりたいかを伝えないと、正しい処方箋はもらえません。

 美容師さんは髪のプロなので、(A)の顔や髪質に似合う髪型は、あなたの顔を見て髪を触ればだいたいわかります。カウンセリング中、美容師さんの頭の中には、5~10個くらいの「似合いそうな髪型」が思い浮かんでいるものです。

 しかし、美容師さんは髪のプロですが、エスパーではありません。だから、あなたがどんな気分で、どんな自分になりたいのかという(B)については、あなた自身が美容師さんに伝えないとわかりません。

 順番は、(B)が先です。まずは、あなたがどんな自分になりたいのか、どんな自分として生きていきたいのか、それを伝えてください。そうすれば、美容師さんが(B)と(A)の重なる部分で、「(本当の意味で)似合う髪型」を提案してくれます。

 同じ型の長さのボブでも、「かっこいいボブ」にしたいのか、「かわいいボブ」にしたいのかによって、美容師さんは、まったく違う切り方をします。

 それなのに、「似合うようにしてください。おまかせします」というのは、病院で診察室に入るなり「さあ、先生、私に合った薬を出してください。手術してくれてもいいんですよ!」と言っているようなものです。

 美容師さんによっては、「おまかせください」とか「おまかせと言われると燃えます(萌えます)」などと話す方もいます。

 でもその場合でも、その美容師さんは「どんなふうになりたいか」に関して、なんらかの質問をあなたにしているはずです。

 美容師さんの言う「おまかせください」は、「(顔立ちや顔型や髪質に対する似合わせ方に関しては、プロである私に)おまかせください」という意味です。

 どんなに腕のある美容師さんだとしても、「どんな自分になりたいか」に関しては、あなた自身が自分で伝えない限りは伝わりません

本当に似合う髪型を見つける方法

 とはいえ、いきなり「どんな自分になりたい? それを美容師さんに伝えて」と言われても困ってしまうと思います。

 そんなあなたには、美容師さんに伝えるべきことを整理できる方法をご紹介します。私が普段、髪型に悩んでいる方々と一緒にやるワークです。

① あなたが、「こんな言葉で形容される(褒められる)自分になりたい」と思う言葉を、20個、書き出してみてください

② そのうち、自分にとってとくに優先順位の高い言葉を3つ選んでください

③ 選び終わったら、なぜその言葉で形容されたいのか(褒められたいのか)、その理由を考えてみてください

どうでしょう。20個すらすら出てきましたか? 意外と時間がかかったかもしれません。このワークをすると「こんなに自分に向き合ったのは、就職活動以来です」などと言う方もいます。多くの方は10~15分くらい、時間がかかります。

 そうですよね。大人になればなるほど、自分のことは後回しになってしまうなと感じます。仕事が忙しかったり、パートナーや子どものことなど、自分よりも優先しなきゃいけないことが増えたり……と、大人の女性はなかなか自分を省みる時間がありません。

 でも「(本当の意味で)似合う髪型」を手に入れるためには、「自分はどんな自分になりたいか」の棚卸しが欠かせないのです。

・大人っぽくしたいのか、若く見せたいのか

・かっこよく見せたいのか、かわいく見せたいのか

・プライベート重視なのか、仕事が大事なのか……

 髪型探しは、自分探しに似ています。ぜひこの機会に、5分でも、10分でもいいので、自分を見つめる時間を作ってみてください。そして、そこで見つけた「なりたい自分のキーワード」を、ぜひ美容師さんに伝えてください。

 美容院に行く前に、髪型が成功するかどうか、勝負の半分は決まっています。ぜひ、2020年を前向きに過ごせる髪型を手に入れてください!

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